ダイビング中の寒さ理由と最適な防寒対策を解説!

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「海の中は最高にきれいだけど、寒くてガタガタ震えてしまっては楽しさも半減…」 「冬の海にも潜りたいけれど、寒さに耐えられるか不安…」

ダイビングにおいて「寒さ」は、快適性を損なうだけでなく、安全性やスキルにも影響を与える大敵です。しかし、なぜ水中ではこれほどまでに体が冷えるのか、その根本的な原因を知り、正しい対策とアイテムを選べば、寒さは劇的にコントロールできます。

この記事では、寒さの原因といった基礎知識から、プロが現場で実践している具体的な防寒テクニック、最新のテクノロジーを活用した次世代装備、そして前後のケアまで、余すことなく解説します。一年を通して快適にダイビングを楽しむための「寒さ対策の決定版」としてお役立てください。

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ダイビングにおける寒さの原因とは?

ダイビング中、なぜ私たちは「寒さ」を感じるのでしょうか? 「ただ水が冷たいから」という単純な理由だけではありません。水という環境の特殊性や、風による影響など、物理的なメカニズムを正しく理解することが、快適なダイビングへの第一歩です。

ここでは、ダイビングにおける寒さの根本的な原因について解説します。

水中の温度と体温の関係

陸上であれば、気温30度といえば汗ばむような暑さを感じる温度です。しかし、ダイビングの世界では同じ30度でも「寒さ」を感じてしまうことがあります。

実は、水は空気の約20倍から27倍もの速さで熱を伝えます(熱伝導率)。 さらに、熱を蓄える容量(熱容量)も空気の3000倍以上あります。つまり、**「水中では、陸上の何十倍ものスピードで体温が奪われ続ける」**ということです。

「ぬるま湯」でも体温は奪われる

人間が裸の状態で、暑くも寒くもないと感じる温度(熱的中立温度)は、空気中なら18〜24℃程度ですが、**水中では約33〜35℃**とされています。 これは、30℃程度の「ぬるま湯」のような水温であっても、長時間浸かっていれば体温は徐々に奪われていくことを意味します。

【体験談】南国セブでの「30度の誤算」

私がかつてセブのダイビングショップを経営していた時の失敗談です。 その日の水温は30度。ゲストもいなかったので、友人とのんびりダイビングをすることにしました。 陸上の気温も高く、「これならTシャツと海パンで行けるだろう」と高をくくって潜りました。

しかし、結果は惨敗でした。エントリーして5分もしないうちに、ガタガタ震えるほどの寒さに襲われたのです。 特に深度を下げると寒さが厳しくなり、たまらず水深5m〜10mの浅場へ避難して、友人についていった苦い記憶があります。

「水温30度=陸上の30度」ではありません。 この時の経験から、いかに水が効率よく(そして容赦なく)体温を奪うかを痛感しました。南国であっても、適切なウェットスーツで身体を守ることは必須条件なのです。

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風や水の影響による体温低下

体温を奪うのは水温だけではありません。「風」や「水の流れ」も大きな要因です。 特にダイビングの現場で侮れないのが、エキジット直後の濡れた身体に吹き付ける風です。

気化熱と風のダブルパンチ

濡れたスーツや皮膚が風にさらされると、水分が蒸発する際に熱を奪う「気化熱」の作用が働きます。 物理的にも、風速が強まれば強まるほど体感温度は劇的に低下します(ウィンドチル効果)。

水中で身体が冷やされた後に、陸上で風に吹かれることで、さらに急激に体温が持っていかれるのです。これを防ぐには、エキジット後はすぐに身体を拭く、風を遮るボートコートを羽織るなどの対策が重要になります。

【体験談】水中よりも辛い「上がった直後」の痛み

冬場、水温12度ほどの環境で水族館の清掃ダイビングをしていた時のことです。 水中も当然寒いのですが、本当に辛いのは「作業が終わって上がった直後」でした。

濡れたスーツのまま外で片付けをしていると、冬の冷たい風が容赦なく吹き付けます。その寒さは、もはや「冷たい」を通り越して**「指先が切れそうなほど痛い」**と感じるレベルです。冬の伊豆などで潜る際も同様で、水中よりエキジット後のボート移動中や休憩中の方が、寒さのピークを感じることが多々あります。

ダイビングの寒さ対策というと水中ばかりに目が行きがちですが、**「陸に上がった直後が最も熱を奪われるリスクがある」**と認識し、陸上での防風対策を徹底することが、体調管理の鍵と言えます。

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寒さのメカニズムを理解したところで、次は具体的な対策について見ていきましょう。

効果的なダイビングの防寒対策

「寒さ」はダイビングの楽しさを半減させるだけでなく、減圧症などのリスクを高める危険な要因でもあります。 しかし、適切な器材選びとちょっとしたスキルがあれば、寒さは劇的にコントロールできます。ここでは、経験と科学的根拠に基づいた「本当に効果のある防寒対策」を解説します。

適切なウェットスーツの選び方

ウェットスーツ選びで最も重要なのは、「生地の厚さ」だと思っていませんか? もちろん、水温に合わせて3mmや5mmを選ぶことは基本ですが、それと同じくらい大事な要素があります。それは**「サイズ感(フィット感)」**です。

「厚さ」+「密着度」が保温を決める

ウェットスーツは、身体とスーツの間に浸入した少量の水を体温で温め、その水層を断熱材として利用する仕組みです。 もしサイズが緩いと、動くたびにスーツ内の温まった水が排出され、冷たい海水が新たに入ってくる「フラッシング」という現象が起きます。これでは、いつまで経っても体は温まりません。

【体験談】レンタルスーツで痛感した「水の出入り」 私はダイビングを始めた当初からフルオーダーのマイスーツを使っていたため、その快適さが当たり前だと思っていました。しかし、ある時日本でレンタルスーツを利用して愕然としました。 マイスーツは皮膚のように吸い付くのに対し、サイズの合わないスーツは**「ちょっとした体の捻りや腕の動き」をするだけで、冷たい水がポンプのように流入してくる**のです。 この経験から、保温においては「生地の厚さ」と同様に「水を遮断するフィット感」も重要だと確信しました。

深場での「スーツ痩せ」に注意

また、ネオプレン素材は気泡を含んでいるため、水深が深くなると水圧(ボイルの法則)によって圧縮されます。 データによると、水深20mではスーツの厚みが約64%も減少し、断熱性能は約40%低下します。深場に行くほどスーツは薄く、寒くなるという物理法則を覚えておきましょう。

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インナーウェアの重要性

スーツ単体では寒さを防ぎきれない場合、インナーウェア(アンダーガーメント)の活用が鍵となります。ここでは「ウェットスーツ」と「ドライスーツ」、それぞれの正解を紹介します。

ウェット派には「フードベスト」をおすすめ

ウェットスーツのインナーとして、私が推奨するのは**「フードベスト」**です。 頭部や首元からの熱損失を防ぎつつ、上半身の体幹(コア)を温めることで、体感温度は劇的に変わります。手軽に導入できる防寒具としては頼りになるアイテムと言えるでしょう。 私は冬の伊豆でレスキュー・ダイバーの講習を受けましたが、水温12度の海をウェットで乗り切りました、相当寒かったですが、フードベストが陰ながら私を守ってくれていた事は忘れません。

ドライ派は「素材」で生死が決まる

ドライスーツの場合、インナー選びはさらにシビアです。絶対にやってはいけないのが「綿(コットン)」の着用です。 綿は汗を吸うと乾きにくく、濡れた状態で冷えると急速に体温を奪います。これは「死を招く行動」と言われるほど危険です。

推奨される機能とアイテム:

  • ウィッキング(吸湿速乾): 汗を皮膚から引き離す機能を持つ化学繊維やメリノウールを選びましょう。
  • 耐圧縮性: 水圧で潰れない「ロフト(嵩)」のある素材が必要です。

【体験談】信頼する「ZERO ウィズル」 私は寒冷地でのダイビングにおいて、ZERO社の「ウィズル」というインナーを愛用しています。非常に暖かく、仮に万が一濡れてしまっても乾きやすく、タフに使えます。ドライスーツ(シェル)の中にはこれを着ないと、冬の海では生きていけないと感じるほどの必須アイテムです。

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ダイビング中の体温維持方法

どれだけ良い器材を使っていても、水中の「泳ぎ方」一つで体温は逃げていきます。寒さを感じ始めた時に実践すべき、サバイバルテクニックを紹介します。

「動かない」ことが最大の防御

「寒いから動いて温まろう」と激しく泳ぐのは逆効果です。 水中では、動けば動くほど体の周りの水が入れ替わる「対流」が発生し、熱が奪われていきます。また、運動による血流増加は、冷たい水への熱放出を加速させてしまいます。

寒さを感じたら、私は以下の「悪あがき」を実践しています。

  1. 脇を締める・膝を曲げる: 体幹の熱を逃がさないよう、脇や股関節(太い血管がある場所)を防御する姿勢をとります。
  2. 動きを最小限に: フィン先だけでちょこっと泳ぐ程度に留め、無駄な対流を起こさないようにします。

生理現象とリスク管理

人間の体は寒冷にさらされると、末梢血管を収縮させて中心部に血液を集めようとします。 私がマイスーツ着用時に行う緊急の手段として「排尿」がありますが、これは一時的な温感を得られるだけでなく、生理的なストレスを緩和する側面もあります。

ただし、震え(シバリング)が止まらなくなったり、逆に震えが急に止まったりするのは危険な兆候です。 「寒い」と感じたら、無理をせず浅場へ移動するか、ダイビングを終了する勇気を持つことが、最終的に最も効果的な対策と言えます。

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ここからは、防寒対策をさらに盤石にするための「おすすめアイテム」を、プロの視点で具体的に紹介します。

おすすめの防寒アイテム

「寒さを我慢する」のは、もう過去の話です。 最新の素材技術やギアの進化により、ダイビング中の寒さは劇的に改善できます。ここでは、私が現場で実際に試し、信頼している「本気でおすすめできる防寒アイテム」を紹介します。

フードやグローブの選び方

フードやグローブは、身体の末端を守る「最後の砦」です。 特に手先や頭部は、寒さを感じやすいだけでなく、熱が逃げやすい部位でもあります。

グローブは「厚さ」だけで選ばない

グローブ選びでよくある間違いが、「厚ければ厚いほど暖かい」という思い込みです。 確かに厚みは保温性を高めますが、分厚すぎて指が動かせないグローブはダイバーにとってストレス以外の何物でもありません。指先の細かい操作(マニュアル・デクステリティ)ができなくなると、マスククリアや器材操作に支障をきたし、安全性が損なわれます。

【体験談】プロが「ZERO」を選ぶ理由

私は寒冷地での水中作業も行うため、グローブには「保温性」と「作業できる操作性」の両立を求めます。 その点で推奨したいのが、ZERO社のグローブです。保温力を確保しつつも指先が動かしやすく、カメラの操作や細かい作業も苦になりません。「安物買いの銭失い」にならないよう、グローブこそ高品質なものを選ぶべきです。

フードは「耳抜き」を恐れずに

「フードを被ると耳抜きがしづらい」と敬遠する人がいますが、最近のフードは通気孔(ベント)が工夫されており、そうしたトラブルは少なくなっています。 私自身、フードによる耳抜きの不快感を感じたことはありません。頭部からの熱損失はバカにならないため、食わず嫌いせずに着用することをおすすめします。

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ヒートベストやインナーの活用

インナーウェアの世界では、素材の進化が目覚ましいです。 先述した「素材選び」の重要性に加え、最近では電気で温める「ヒートベスト」も人気ですが、その前にまず見直すべきは「ベースとなるインナー」です。

まずは「信頼できるインナー」を固める

電熱ベストなどのアクティブ・ヒーティングは強力ですが、バッテリー切れや故障のリスク(水没や断線)が常に伴います。 もし減圧中にヒーターが止まって急激に冷えると、減圧症のリスクが跳ね上がるというデータもあります(Cold-Ascent)。 だからこそ、まずは電気に頼らないパッシブな(受動的な)断熱性能を高めることが最優先です。

【体験談】命を守る「ZERO ウィズル」 私は電熱ベストを使ったことがありません。なぜなら、パッシブなインナーだけで十分に暖かいからです。 愛用しているのは、やはりZERO社の「ウィズル」。シェルドライの中にはこれを着ないと、冬の寒冷地では生きていけないレベルで信頼しています。ハイテク機器に頼る前に、まずはこうした高機能インナーで基礎体温を守る装備を整えましょう。

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ボートコートや防寒着の必要性

「ダイビングが終わったから防寒は終わり」ではありません。 記事の冒頭で触れた通り、陸に上がった直後こそが、最も体温管理に注意すべきタイミングです。

濡れたスーツは「冷却装置」になる

エキジット後の濡れたウェットスーツは、風に当たると気化熱によって急速に冷却され、まるでラジエーターのように体温を奪い続けます。 これを防ぐには、風を通さない防寒着(ボートコートやウィンドブレーカー)を羽織り、蒸発プロセスを遮断することが不可欠です。

【体験談】南国スコールの恐怖とサバイバル術

「南国だからボートコートなんていらない」と思っていませんか? かつてセブ島でガイドをしていた時、急なスコールに遭遇し、ボート上で震えるほど冷えた経験があります。常夏であっても、雨と風に打たれれば低体温症のリスクは十分にあります。 ネオプレン製のボートコートがあればベストですが、もし持っていない場合は、**「船上の風が当たらない場所(操船席の後ろなど)に避難する」**だけでも随分と違います。自分の身を守る場所を確保するのも、立派なダイバーのスキルです。

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最新の防寒対策といえば、こうした伝統的なギアの進化に加え、テクノロジーの進化も見逃せません。

最新テクノロジーで進化する防寒装備

ダイビングの防寒対策といえば、厚手のインナーを着込んだり、ホッカイロを貼ったりといったアナログな手法が主流でした。しかし近年、宇宙開発や最先端の科学技術を応用した「スマートな防寒」が急速に進化しています。

ここでは、最新テクノロジーを活用した次世代の防寒装備と、それがもたらす可能性について解説します。

次世代の断熱素材:エアロゲルとグラフェン

従来の「厚着をして空気の層を作る」という発想を超えた、驚異的な断熱素材がダイビング業界にも導入され始めています。

「凍った煙」エアロゲル

NASAが火星探査機などのために採用した技術として知られるのが「エアロゲル」です。 成分の90〜99.8%が空気で構成されているため「凍った煙」とも呼ばれ、静止している空気よりも熱を伝えないという究極の断熱性能を持っています。 その実力は、わずか3mmの厚さで、40mmのダウンジャケットと同等の暖かさを発揮すると言われるほどです。これを使えば、分厚いインナーで動きにくくなるストレスから解放される日が来るかもしれません。

熱を操る「グラフェン」

もう一つの注目素材が「グラフェン」です。炭素原子が結合したシート状の素材で、高い熱伝導性と強度を誇ります。 グラフェンを裏地などに採用することで、体温を効率よく吸収し、遠赤外線エネルギーとして身体に再放射(反射)して温めることが可能です。また、抗菌性も持ち合わせているため、長期間の遠征などでも衛生的に使えるというメリットもあります。

進化するネオプレン

ウェットスーツの素材であるゴム(ネオプレン)も進化しています。 従来の石油ベースではなく、日本の技術が生んだ「石灰石ベース・ネオプレン」は、99.7%純度の石灰石から作られます。独立気泡構造の中に熱伝導率の低い「窒素ガス」を封入することで、水と比べて約24倍もの断熱性を実現しています。水を含まず、皮膚のように伸縮するため、暖かさと動きやすさを両立した高級素材として定着しつつあります。

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進化する「アクティブ・ヒーティング」

素材そのものの断熱性(パッシブ)だけでなく、電気の力で強制的に温める「アクティブ・ヒーティング(能動的加温)」も、技術革新により使いやすくなっています。

「線」から「面」へ

かつての電熱ベストは、金属の電熱線が入っており、断線しやすく「線」の部分だけが熱くなるのが欠点でした。 しかし現在は、「グラフェン加熱フィルム」や「カーボンファイバー」といった面状の発熱体が主流になりつつあります。これにより、柔軟性が高く、スイッチを入れて1分以内に50℃まで温まるような即応性と、ホットスポット(局所的な高温)のない均一な暖かさを実現しています。

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テクノロジー活用時の注意点と未来

これら最新ギアは非常に魅力的ですが、使い方を誤ると逆に危険な状態を招く「減圧の罠」が存在することを忘れてはいけません。

「減圧の罠」とは?

生理学的に、潜水の前半(深い場所)で体を温めすぎると、血流が良くなりすぎて余分な窒素(不活性ガス)を体に取り込んでしまいます(Warm-Bottom)。 その状態で、減圧(浮上)中にバッテリーが切れて急に体が冷えると、今度は血管が収縮して窒素が排出されにくくなり(Cold-Decompression)、減圧症のリスクが最大化してしまうのです。

「寒くない」だけで判断しない

高機能なヒートベストを着ていると、皮膚の表面は「温かい」と感じますが、深部体温がどうなっているかは別問題です。 「スイッチがあるから大丈夫」と過信せず、万が一バッテリーが切れても寒さを凌げるだけのベースレイヤー(インナー)を着用することが、テクノロジーを安全に使いこなす鉄則です。

最新テクノロジーは、正しく理解して使えば、冬のダイビングを劇的に快適にする強力な武器となります。自分のダイビングスタイルに合わせて、賢く取り入れていきましょう。

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最後に、ダイビングの「前後」に行うべきルーティンを確認しましょう。ここを疎かにすると、せっかくの装備も効果を発揮しません。

ダイビング前後の寒さ対策

ダイビングにおいて「寒さ」との戦いは、水中にいる間だけではありません。 むしろ、潜る前の準備段階や、上がった後のケアを徹底できるかどうかが、その日のダイビングの質(と安全性)を大きく左右します。

ここでは、プロの現場でも実践されている「ダイビング前後の寒さ対策」のルーティンを紹介します。

ダイビング前の準備と服装

「潜る前から勝負は始まっている」と言っても過言ではありません。 陸上での準備段階で体を冷やしてしまうと、水中での耐寒時間は大幅に短縮されてしまいます。

「早着替え」は逆効果?

準備を急ぐあまり、早い段階でウェットスーツやドライスーツを完全に着込んでしまう人がいます。しかし、これは「汗冷え」のリスクを高める行為です。 陸上でかいた汗は、水中で体を冷やす原因になります。特に冬場でも、厚手のインナーを着て暖房の効いた室内にいると意外と発汗するものです。

【体験談】プロの「腰巻きスタイル」 私は、待ち時間が長い場合は直前までスーツを全部着ません。上半身は脱いで腰に巻いておくなどして、体温調整を行っています。 ブリーフィングやセッティング中は身軽な状態で待機し、エントリー直前にサッと着る。このタイミング管理が、快適さを保つコツです。

水分補給は「水」で

「寒いからコーヒーで温まろう」というのは避けるべきです。カフェインには利尿作用があり、ダイビング特有の「浸漬利尿(水圧や寒さで尿意が増す現象)」と相まって、脱水を加速させてしまいます。 脱水は減圧症のリスクも高めるため、潜水前は水やスポーツドリンクでの水分補給(プレハイドレーション)を心がけましょう。

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ダイビング後の体温回復法

エキジット直後は、身体が最も無防備な状態です。 前述したように、濡れたスーツと風による「気化熱」は急速に体温を奪います。

現場の設備で変わる「3段階フロー」

私は現場の環境に合わせて、以下の3パターンで行動を決めています。

  1. お湯が豊富(温泉・風呂あり): スーツを着たまま即入ります。スーツ内にお湯を循環させるのが最も早く確実に温まります。
  2. シャワーのみ: スーツの上から温かいシャワーを浴びて、内部を温めます。
  3. お湯がない: これが一番危険です。**「即脱いで、拭いて、着込む」**が鉄則。濡れたスーツを着続けるくらいなら、素早く脱いで乾いたバスタオルや服にくるまり、風を遮断できる場所(車内など)へ退避します。

「震え」が止まっても油断しない

震え(シバリング)は体が熱を作ろうとしている証拠ですが、低体温症が進行すると、逆に震えが止まることがあります。 「震えが止まったから回復した」と勘違いせず、しっかりと温かい飲み物(甘いものが効果的)を摂り、内側からもエネルギーを補給しましょう。

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エントリー前の注意点

いよいよ海に入る直前、最後にできる「悪あがき」とも言えるテクニックがあります。

衝撃を和らげる「お湯注入」

冬場の冷たい海に飛び込む際のショック(コールドショック反応)は、心臓に大きな負担をかけます。 ウェットスーツの場合、私は事前にシャワーで温かいお湯をスーツ内に入れておきます。これだけで、エントリー直後の「ヒヤッ」とする衝撃をかなり和らげることができます。

ドライスーツは「トイレ」が命

ドライスーツで潜る場合、何よりも重要なのは**「直前のトイレ」**です。 寒さで尿意が近くなるのは生理現象ですが、ドライスーツの中で「トイレに行きたい」と我慢することは、寒さ以上のストレスとなり、楽しさを台無しにします。 「さっき行ったから大丈夫」と思わず、念には念を入れてトイレを済ませておくことが、実は最強の防寒対策(精神的な余裕の確保)と言えるかもしれません。

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まとめ

ダイビングの寒さ対策は、単に「厚着をする」だけではありません。

  • 原因を知る: 水の熱伝導率や、陸上での風の影響(気化熱)を理解する。
  • 装備を選ぶ: スーツは「厚さ&フィット感」重視、インナーやグローブは「信頼できる素材・機能」重視で選ぶ。
  • テクノロジーを活用する: 最新のエアロゲルやグラフェン素材、アクティブヒーティングを賢く取り入れる。
  • 行動を変える: 陸上での汗冷えを防ぎ、エキジット後は速やかに保温・防風ケアを行う。

これらの知識とちょっとした工夫、そしてプロも信頼するアイテムを取り入れることで、ダイビングの快適さは驚くほど変わります。 寒さへの不安を解消し、オールシーズン快適なダイビングライフを楽しんでください!

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Last modified: 5 Jan 2026

水中の冒険