ダイビング後に飛行機搭乗は危険?知っておくべき理由

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青く輝く海、無重力の浮遊感。ダイビングは日常を忘れさせてくれる最高のレジャーですが、旅の計画を立てる際、絶対に無視できないルールがあります。それが**「ダイビング後の飛行機搭乗(FAD: Flying After Diving)」**です。

「楽しかったから、帰りの便のギリギリまで潜りたい」 その気持ちは痛いほど分かりますが、知識なしに行動すると、旅の締めくくりに命に関わるトラブルを招きかねません。

この記事では、なぜダイビング直後に飛行機に乗ってはいけないのか、その医学的な理由から、推奨される待機時間、そして安全かつスマートな旅行スケジュールの組み方までを網羅的に解説します。安全という土台があってこそ、海の世界は輝きます。正しい知識を身につけ、最高のダイビングトリップを計画しましょう。


ダイビングと飛行機搭乗の基本知識

海という非日常の世界を楽しむためには、陸上とは異なるルールと安全管理が必要です。「なんとなく楽しそう」で始める前に、ダイビングの魅力の本質と、命に関わる「飛行機搭乗」のルールを正しく理解しておきましょう。

ダイビングの基本とその魅力

ダイビングに興味を持つ理由は人それぞれですが、多くのダイバーを虜にしている最大の魅力、それは**「浮遊感」**です。

重力とストレスからの解放

海の中はまさに無重力の世界です。重たい器材を背負っていても、水に入れば指一本で体をコントロールできるほどの自由が手に入ります。この「重力から解放される身体的感覚」に加え、スマホも仕事も届かない海中は「日常の思考から解放される精神的デトックス」の時間でもあります。余計なことを考えず、ただ呼吸と目の前の景色に集中する時間は、現代人にとって最高の癒やしとなるでしょう。

安全を楽しむための「絶対ルール」

もちろん、この楽しさは安全という土台があってこそです。ダイビングは人体が水圧という特殊な環境にさらされる活動であり、減圧症(DCS)などのリスクと隣り合わせです。

初心者がまず覚えるべき最も重要なルールは、**「いかなる時も息を止めてはいけない」**ということです。呼吸を止めて浮上すると、肺の中の空気が膨張し、肺の損傷や深刻な事故につながる恐れがあるからです。

また、安全管理には「教育」が不可欠です。NAUIやPADIといった指導団体は、講習を通じて正しい知識とスキルを提供しています。正しく行えば、ダイビングは体力やメンタルヘルスを向上させる素晴らしいスポーツです。まずはスクールで基礎をしっかり学びましょう。

基本を押さえたところで、ここからはダイバーにとって避けて通れない「飛行機との関係」について解説します。


飛行機搭乗の基本ルール

旅行でダイビングに行く場合、最も気をつけなければならないのが**「ダイビング後の飛行機搭乗(FAD: Flying After Diving)」**です。 「帰りの飛行機に乗るだけ」と油断してはいけません。ここには、ダイバー特有の医学的なリスクが潜んでいます。

なぜすぐに飛行機に乗ってはいけないのか?

ダイビング中、体内には高圧下で「窒素」が蓄積されます。通常は時間をかけて体外へ排出されますが、窒素が残った状態で飛行機に乗ると問題が起きます。 上空を飛ぶ飛行機の機内は、地上よりも気圧が低く(標高1,800m〜2,400m相当)、この気圧低下によって体内の窒素が膨張し、気泡(バブル)化して減圧症(DCS)を引き起こすリスクがあるのです。詳しいメカニズムについては後述しますが、まずは「飛行機はNG」という大原則を心に留めてください。

守るべき「待機時間」の目安

減圧症を防ぐためには、ダイビング終了から飛行機搭乗までに**「水面休息時間(Surface Interval)」**を十分に取る必要があります。

  • 科学的な最低基準: 単発のダイビングで最低12時間、反復ダイビングで最低18時間の待機が推奨されています。
  • 推奨される安全ルール: 多くの指導団体やベテランダイバーは、より安全マージンを取った**「24時間ルール」**を推奨しています。

実際の旅行スケジュールでは、**「最終日の前日は潜らない」あるいは「午前中で切り上げる」**のが鉄則です。 「ショップが調整してくれるだろう」と受け身にならず、自分の身を守るために、自ら余裕のあるフライト計画を立てる自己管理が重要です。

便利なツールの活用と注意点

現代のダイビングでは、「ダイブコンピューター」が必須アイテムです。これには**「飛行機搭乗禁止時間(No-Fly Time)」**をカウントダウン形式で表示する機能がついているものが多く、基本的にはこの表示が消えるまで待機するのが最も確実な方法です。

また、以下の行動も減圧症リスクを高めるため、搭乗前は控えましょう。

  • 激しい運動: 重い器材を持って走り回るなどは避けてください。
  • 過度の飲酒: アルコールは脱水を招き、血液循環を悪くして窒素の排出を妨げます。

飛行機に乗る際は、水分をしっかり摂り、ゆったりと過ごして体を休めることが、旅の最後を安全に締めくくるコツです。

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ダイビング後の飛行機搭乗が危険な理由

楽しいダイビング旅行の締めくくりに、なぜ「飛行機に乗ってはいけない時間」が存在するのでしょうか。それは、ダイバー特有の病気である「減圧症」のリスクが、上空の環境下で劇的に高まるからです。ここでは、そのメカニズムと具体的な症状について解説します。

減圧症とは何か

体内で「炭酸ジュース」のような現象が起きる

減圧症(Decompression Sickness, DCS)とは、一言で言えば「血液や組織の中に溶け込んでいた窒素が、気泡(バブル)になってしまう病気」です。

私たちが陸上で生活している時、体内には一定量の窒素がバランスよく溶け込んでいます。しかし、ダイビングで水中に潜り周囲の圧力が高まると、空気中の窒素が通常よりも多く体液や組織に溶け込んでいきます(ヘンリーの法則)。

問題は、圧力が下がった時です。 炭酸飲料のフタを開けると、急に圧力が下がってシュワシュワと泡が出てくるのを見たことがあるでしょう。これと同じ現象が体内で起こります。急激に浮上したり、圧力が低い場所へ移動したりすると、溶け込んでいた窒素が飽和状態を超えて溢れ出し、体内で気泡化して血管を塞いだり組織を圧迫したりするのです。

飛行機が「トドメ」になる理由

ダイビング終了後、地上(1気圧)にいる間は問題なくても、その直後に飛行機に乗ると状況が一変します。 飛行中の機内は、地上よりも気圧が低く調整されています(約0.75気圧程度)。

この気圧低下が「二次減圧」として作用し、本来なら自然に排出されるはずだった微細な窒素ガスを一気に膨張させ、減圧症を発症させる「引き金」になってしまいます。これが、FAD(Flying After Diving)が厳禁とされる物理的な理由です。


減圧症の症状と影響

減圧症の症状は、「なんとなくダルい」といった軽微なものから、命に関わる重篤なものまで多岐にわたります。万が一のサインを見逃さないためにも、具体的な症状を知っておきましょう。

主な症状とリスク

症状は大きく分けて以下の2つのタイプがあります。

  • 軽症(I型):

    • 関節痛(ベンズ): 肘や膝などの関節が深く鈍く痛みます。
    • 皮膚症状: かゆみや発疹、「大理石斑」と呼ばれる独特の模様が出ることがあります。
    • 全身症状: 異常な倦怠感や疲労など、風邪のような症状が現れることもあります。
  • 重症(II型):

    • 神経系: 手足のしびれ、麻痺、筋力低下、めまいなどが発生します。
    • 呼吸・循環器系: 呼吸困難(チョークス)や胸の痛み、意識障害を引き起こし、最悪の場合は死に至るリスクもあります。

特に恐ろしいのは、地上では「軽症(ちょっと関節が痛い)」程度だったとしても、そのまま飛行機に乗ると、上空で急激に悪化して「重症(麻痺や意識障害)」に進行するリスクがあるという点です。

過度に恐れる必要はない(正しい管理があれば)

このように症状を並べると怖く感じるかもしれませんが、過剰に不安になる必要はありません。 現代のダイビングでは、**「ダイブコンピューターの指示通りに潜っている限り、過度に敏感になったりビクビクしたりする必要はない」**というのが、多くのベテランダイバーやインストラクターの共通認識です。

筆者の経験でも、作業ダイビングでうっかり「減圧停止指示(DECO)」を出してしまい、安全の限界を超えてしまった時はさすがに体調変化を注意深く観察しましたが、通常のレクリエーションダイビングの範囲内であれば、そこまで神経質になることはありません。

重要なのは、**「海の中ではダイブコンピューターが守ってくれるが、飛行機に乗るタイミングだけは人間が意思を持って守る必要がある」**ということです。 万が一、ダイビング後に手足のしびれや関節痛などの違和感がある場合は、絶対に飛行機には乗らず、専門の医療機関に相談してください。

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ダイビング後の飛行機搭乗までの待機時間

ダイビングを楽しんだ後、飛行機に乗るまでには必ず「空けなければならない時間」があります。これを守ることは、減圧症を防ぐための絶対条件です。では、具体的に何時間空ければ良いのでしょうか?

1回のダイビング後の待機時間

旅行初日に体験ダイビングで1回だけ潜った、といった「単発のダイビング」の場合でも、待機時間は必要です。

科学的な最低ラインと安全マージン

現在の医学的なガイドライン(DAN/UHMSのコンセンサス)では、減圧停止を伴わない単一のダイビングの後、飛行機に搭乗するまでに最低12時間の待機時間が推奨されています。

「なんだ、半日でいいのか」と思うかもしれません。しかし、これはあくまで「DCS(減圧症)の発症リスクが極めて低くなる科学的な下限値」です。 多くの指導団体やショップでは、安全マージンを考慮してより長い時間を推奨することが一般的です。特に、体調や個人差を考慮すると、可能であれば18時間〜24時間空けることが理想的とされています。

24時間空けるのが「正解」に近い

「12時間でOK」というルールは存在しますが、実際の旅行では「念のため翌日まで待つ(約24時間)」というスケジュールを組むのが最も賢明です。 24時間の待機は、減圧症リスクを統計的に0.004%という極めて低いレベルまで下げるだけでなく、フライトによる脱水や疲労といった他のリスク要因からも体を回復させる時間になります。


複数回のダイビング後の待機時間

ダイビング旅行の多くは、1日に2〜3本、それを数日間続ける「複数回・複数日ダイビング」のスタイルです。この場合、体内に蓄積される窒素量は単発の時よりも多くなるため、より長い待機時間が求められます。

「最低18時間」のルール

複数回、または複数日にわたって潜った場合、推奨される待機時間は最低18時間に延びます。 これは、反復ダイビングによって脂肪などの「遅い組織」に溜まった窒素が抜けるのに時間がかかるためです。

筆者おすすめ:「最終日の前日は潜らない」という選択

18時間というルールはありますが、フライト時間から逆算して「えっと、14時に飛行機だから前日の20時まで潜れる…?」といった計算をするのは面倒ですし、計算ミスのリスクもあります。

そこでおすすめしたいのが、**「最終日の前日は潜らない(丸1日空ける)」というシンプルなルールです。 いわゆる「24時間ルール」を採用することで、安全マージンを最大限に確保できるだけでなく、「スケジュールの計算ミスを防ぐ」**という大きなメリットがあります。

タイトな旅程での「攻めのスケジュール」

もちろん、「休みが短くてどうしても潜りたい」という場合もあるでしょう。 その場合は、「18時間ルール」を正しく活用します。例えば、翌日の朝のフライトであれば、「前日の午前中に2本だけ潜り、午後は観光に充てる」といったスケジュールなら、18時間の待機時間をクリアできるケースが多いです。

重要なのは、**「ダイブコンピューターの飛行機搭乗禁止時間(No-Fly Time)」**が消えるのを必ず確認することです。 筆者の経験上、無茶な潜り方をせず、通常のファンダイビングの範囲内であれば、コンピューターの指示が想定外に長引いて帰れなくなるようなトラブルはまず起きません。自分の旅程と相談しながら、無理のない計画を立てましょう。

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減圧症を防ぐための対策

ダイビングは安全に楽しめば素晴らしいスポーツですが、減圧症のリスクをゼロにすることはできません。しかし、正しい知識と準備があれば、そのリスクを最小限に抑えることは十分に可能です。ここでは、ダイビングの「前」と「後」に実践すべき具体的な対策を紹介します。

ダイビング前の準備

安全なダイビングは、水に入る前から始まっています。単に器材を準備するだけでなく、自分の体調やダイビング計画を万全に整えることが、減圧症を防ぐ第一歩です。

「控えめな計画」が命を守る

ダイビングの計画を立てる際、最も重要なのは「保守性(Conservative)」という考え方です。これは、限界ギリギリを攻めるのではなく、安全マージンを十分に取った計画を立てることを意味します。 具体的には、以下のような対策が有効です。

  • 仮想深度の設定: ダイブテーブルやコンピューターを使用する際、実際の水深よりも3〜4メートル深いと仮定して計算します。
  • リスク要因の考慮: 冷水でのダイビングや運動量が多い場合、あるいは高齢や体調不良などのリスクがある場合は、通常よりもさらに控えめな計画を立てる必要があります。

インストラクターはお客様の安全を守るため、ダイバーの状態に合わせて意図的に保守的なプランを提案することがあります。これは「臆病」なのではなく、プロとしての「安全管理」であることを理解しましょう。

プロは見ている:「会話のキャッチボール」

体調管理も重要な準備の一つです。二日酔いや脱水症状は論外ですが、自分では気づきにくい体調不良もあります。 インストラクターは、ゲストとの会話を通じて体調をチェックしています。もし、**「ガイドと普通に目を見て会話ができない」「反応が鈍い」「呂律が回らない」**といった様子が見られれば、それは体調不良のサインであり、ストップをかけることがあります。 ダイビング当日は、「ガイドとスムーズに会話ができるか?」をセルフチェックの基準にしてみるのも良いでしょう。


ダイビング後の注意点

ダイビングが終わった後も、体の中では窒素の排出(オフガス)が続いています。このプロセスを妨げず、スムーズに行うための行動が求められます。

「家に帰るまでがダイビング」:意外な高所移動に注意

ダイビング後の飛行機搭乗が危険であることは前述しましたが、見落としがちなのが「陸路での高所移動」です。 例えば、伊豆で潜った後に箱根の峠を越えて帰宅する、あるいは自宅が標高の高い場所にある場合、それは立派な「高所移動」になります。

標高400m以上の場所への移動は減圧症のリスクを高める可能性があります。 筆者の経験でも、山梨県(標高が高い地域)に住んでいた頃は、海から帰宅すること自体が高所移動になるため、帰宅時間を調整してリスク管理をしていました。 観光で山に登る予定がなくても、**「帰りのルートに峠越えはないか?」**を必ず確認しましょう。

体の声を聴く:休息と水分補給

ダイビング直後の行動も重要です。医学的には、以下の点が推奨されています。

  • 水分補給: 適切な水分補給は血流を良くし、窒素の排出を助けます。ただし、飲み過ぎは肺水腫のリスクを高めるため「適度」に留めましょう。
  • 激しい運動を避ける: 浮上直後の激しい運動は、気泡の形成を促進させる恐れがあります。

とはいえ、あまり神経質になりすぎる必要はありません。ダイビング後は心地よい疲労感があるため、自然と体は休息を求めます。 「疲れたから少し休もう」「喉が渇いたから水を飲もう」という体の自然な声に従って、ゆったりと過ごすことが、結果として最も理にかなったケアになります。

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ダイビング旅行の計画と移動手段

安全で楽しいダイビング旅行には、陸上での綿密な計画が欠かせません。「潜る」だけでなく、「休む」「運ぶ」ことまで考えたスマートな旅程を組みましょう。

旅行日程の組み方

余裕こそが安全の鍵

旅行のスケジュールを立てる際、最も重要なのは「大人の余裕」を持つことです。 到着後すぐに海へ飛び込みたくなる気持ちは分かりますが、移動の疲れや時差ボケは、減圧症(DCS)のリスクを高める要因になり得ます。 到着日はあえて潜らず、体調を整える日に充てることで、翌日からのダイビングを万全の状態で楽しむことができます。

最終日は「陸」を楽しむ日に

ダイビング後の飛行機搭乗(FAD)には、少なくとも18時間〜24時間の待機時間が必要です。 この制約を逆手にとって、最終日は「海と関係ない観光」やグルメを楽しむ日にしてはいかがでしょうか。あるいは、窒素の蓄積リスクがない「シュノーケリング」なら、フライト直前まで海を満喫することも可能です。 「潜れない時間」を「別の楽しみの時間」と割り切ることで、旅の充実度はグッと上がります。


ダイビングスポットへのアクセス方法

器材を持っての移動はダイバーの悩みの種ですが、ここにも知っておくべきルールとコツがあります。

器材は「送る」が正解

重いダイビング器材を持って空港まで移動するのは大変な重労働です。疲労はダイビングの大敵ですので、可能な限り宅配便を利用しましょう。 国内旅行であれば、宿泊先や現地のダイビングショップへ直送するのが最も便利です。その際、送り状には必ず「ダイビング器材(ワレモノ)」と明記し、破損トラブルを防ぐ対策を忘れないでください。

飛行機に乗せる際の注意点(電池・タンク)

自分で器材を持って飛行機に乗る場合、特に注意が必要なのが「バッテリー」と「タンク」です。

  • リチウムイオン電池(ライトの予備電池、モバイルバッテリーなど): これらは発火の危険性があるため、預け入れ荷物に入れることは禁止されています。必ず端子を保護した上で、機内持ち込み手荷物として持参してください。

  • ダイビング用タンク: もしマイタンクを輸送する場合は、バルブを開けて完全に空の状態にする必要があります。ただし、基本的には現地でレンタルするのが一般的で無難です。

「陸の移動」も要注意

現地での移動手段も確認が必要です。前述の通り、ダイビング後に標高400m以上の場所へ移動することは、飛行機に乗るのと同じくらいのリスクがあります。 レンタカーで峠越えをするルートや、標高の高い観光地(ハワイのマウナケア山や富士五湖周辺など)へ行く計画がある場合は、十分な休息時間を取った後で移動するか、ルートを変更するなどの対策が必要です。

旅程が決まったら、あとは現地でどう過ごすかです。ダイビング直後の「陸上での過ごし方」にも、実はOKとNGがあります。

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ダイビング後のアクティビティ

ダイビングが終わった後の時間は、余韻に浸りながらリラックスできる至福のひとときです。しかし、陸上でも「減圧症リスク」はゼロではありません。飛行機に乗らなければ何をしても良いわけではなく、安全に楽しむためのポイントがあります。

飛行機搭乗以外の注意すべきアクティビティ

「飛行機に乗らなければ大丈夫」と思っていませんか? 実は、日常的な行動の中にも、ダイビング直後には避けるべきものがいくつかあります。

山登り・高所ドライブ

飛行機と同じく、陸上でも「高い場所へ行くこと」はリスクになります。 海抜300メートル(約1,000フィート)を超える場所への移動は、体内の窒素を気泡化させる恐れがあります。 登山はもちろん、**「峠越えのドライブ」や、観光地での「ジップライン」「パラグライダー」**なども高所移動に含まれるため、ダイビング後24時間は避けるのが無難です。

激しい運動(筋トレ・ランニング)

「ジムで筋トレ」「ビーチでランニング」といった激しい運動も、ダイビング直後は控えましょう。 筋肉や関節に強い負荷がかかると、体内で気泡(バブル)が作られやすくなり、減圧症のリスクを高める可能性があります。 少なくともダイビング後4〜6時間は安静にし、可能であれば24時間は激しい運動を避けるのが理想的です。

サウナ・熱いお風呂

最近流行りの「サ活(サウナ活動)」ですが、ダイビング直後はNGです。 体が急激に温まると、組織に溶け込めるガスの量が減り(溶解度の低下)、気泡ができやすくなってしまいます。 プロのインストラクターも「陸上のブームをそのまま海後に持ち込まない」よう注意を促しています。シャワーや入浴はぬるめにするか、どうしても温まりたい場合は15〜30分ほど時間を空けてからにしましょう。


ダイビング後に楽しむべきアクティビティ

では、ダイビング後は何をして過ごせば良いのでしょうか? おすすめは、心身をリラックスさせ、回復を促すアクティビティです。

マッサージやヨガでリラックス

激しい運動はNGですが、ストレッチや軽めのヨガは血行を良くし、窒素の排出を助けるため推奨されています。 ただし、強く揉みほぐす「ディープティッシュマッサージ」は、組織を刺激して気泡化を招く恐れがあるため、少なくとも12時間は控えてください。優しいリラクゼーションマッサージを選びましょう。

最高の「アフターダイブ飯」

ダイビングは意外とカロリーを消費するスポーツです。心地よい疲れの後には、美味しい食事が待っています。 筆者のおすすめは、南国リゾートで味わう**「ステーキとビール」**。 ダイビング後の体は味覚が鋭敏になっており、ガッツリした肉料理と冷えたビールは格別の美味しさです。水分補給を兼ねて(アルコールは脱水作用があるため水も一緒に飲みましょう)、地元のグルメを堪能するのも旅の醍醐味です。

ログ付けと次の計画

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ダイビングと飛行機搭乗に関するよくある質問

安全に関する話題は、噂や古い情報が混ざり合って、何が本当なのか分からなくなりがちです。ここでは、ダイバーからよく寄せられる2つの質問に、最新の基準と現場の視点からお答えします。

ダイビング後すぐに飛行機に乗ることは法律で禁止されているのか?

結論から言うと、一般のダイバーがダイビング直後に飛行機に乗ることを法律で禁止する規定はありません(パイロットなどの乗務員を除く)。 空港で「あなたさっき潜りましたね?逮捕します」と言われることはないのです。

「罰則」はないが、「罰」はある

しかし、法律違反ではないからといって「安全」なわけではありません。むしろ、法律よりも恐ろしい**「物理的な身体への罰則」が待っています。 それが減圧症です。減圧症の最大のリスクは、風邪や擦り傷のように「寝ていれば自然に治るものではない」**という点です。 一度発症すれば、激痛に襲われるだけでなく、専門の「再圧チャンバー」という特殊な治療装置に入らなければ治りません。旅先での緊急搬送や治療費の負担など、その代償は計り知れません。 法律のためではなく、自分の体と人生を守るために、待機時間(18時間〜24時間)のルールを厳守してください。


飛行機に乗った後のダイビングは安全か?

「帰りはダメだけど、行きはどうなの?」という質問もよくあります。 医学的な答えとしては、飛行機に乗った「後」のダイビングに、減圧症のリスクはありません。 飛行機(低気圧)から水中(高気圧)への移動は、減圧症の原因となる「気泡化」とは逆のプロセスだからです。

「医学的にOK」でも「体調的にNG」な場合も

ただし、「到着してすぐに潜るのがベストか?」と聞かれれば、答えは「No」である場合が多いです。 長時間のフライトによる**「疲労」「脱水」「時差ボケ」**は、ダイビング中の判断力を鈍らせ、思わぬトラブルを招く原因になります。

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まとめ:安全な計画が最高の思い出を作る

ダイビングと飛行機の関係について、メカニズムから具体的なスケジュールまで解説してきました。

最も大切なポイントは、**「最終日の前日は潜らない(24時間空ける)」**というシンプルなルールの徹底です。この1日を「潜れない日」と捉えるのではなく、「陸上の観光やグルメを楽しむボーナスタイム」と捉えれば、旅の楽しさは倍増します。

海という大自然にお邪魔する以上、私たちはそのルールに従う必要があります。ダイブコンピューターの指示を守り、フライト計画に余裕を持つこと。この「大人の余裕」こそが、ダイビングを長く、安全に楽しむためのパスポートです。

次のダイビング旅行では、ぜひ「陸も海も楽しむ」完璧なスケジュールで、最高の思い出を作ってください。

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Last modified: 28 Nov 2025

水中の冒険